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税理士法人 成和新着情報

【国際税務教室】 非居住者と定額減税

  令和6年分所得税について定額による特別控除(以下、「定額減税」とします)が実施されます。例年にない取り扱いということもあり、実務にあたり注意を要する事項も見受けられます。なかでも、非居住者に対する取り扱いについて迷う場合も少なくありません。定額減税における非居住者の取り扱いについてみれば、以下の通りです。

 定額減税の適用対象者は、令和6年分の所得税の納税者である居住者に限定されていることから、令和6年のすべての期間において非居住者とされる場合には適用対象者になりません。他方、令和6年の途中で ①居住者から非居住者となる場合や、②非居住者から居住者となる場合については、納税者の居住者とされる期間に応じて適用を受けることになります(※1)

また、特別控除額は納税者に加えて同一生計配偶者及び扶養親族(以下、「同一生計配偶者等」とします)に応じた金額とされます。この場合の同一生計配偶者等についても居住者に限定(※2)されており、控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の範囲と異なることから注意が必要です。

(※1)①令和6年6月1日(以下、「基準日」とします)より前に非居住者となる場合は、基準日以後に準確定申告(基準日以前に準確定申告をしている場合には、更正の請求)を提出し、基準日以後に非居住者となる場には、給与所得者については通常(出国時の)年末調整によって、給与所得以外の所得がある場合は、準確定申告により精算をすることにより適用を受けます。②非居住者から居住者となった場合は、給与所得者については、居住者になった日に応じて月次もしくは年調減税事務により、給与所得以外の所得がある場合は、確定申告により精算することにより適用を受けます。(※2)原則としてその年の12月31日の現況により(年の途中で非居住者となる場合には、出国の時の現況により)判定を行います。

 
 
交際費等損金不算入制度の拡充

 令和6年3月31日までは、法人の飲食を伴う企業活動について、一人あたり5,000円を上限として損金算入が認められておりましたが、中小企業の経済活動の活性化の視点や物価動向を背景として、令和6年4月1日からは、上限が一人あたり10,000円に拡充されています(令和6年度税制改正)。実務上、①上限となる一人あたり10,000円(改正前は、5,000円)の判定基準や、②いつの支出から上限が変更されるのかといったところがポイントといえます。

 ①についてみれば、法人の適用している会計処理により異なります。税込経理方式を適用している場合には、上限となる10,000円は税込金額により判定を行います。他方、税抜経理方式を適用している場合には、税抜金額により判定を行うことになりますが、㋐当該法人が選択をしている消費税の仕入税額控除の方式によって、また、㋑飲食費等の支出先が適格請求書発行事業者か否かで判定基準が異なることから注意が必要です。すなわち、原則的な仕入税額控除方式を適用する場合において、適格請求書発行事業者でない事業者への支出については、インボイス制度の経過措置期間中は継続適用を前提として仮払消費税がないものとされる部分は本体価格(交際費)に含まれるとされることから、当該金額(仮払消費税がないものとされる部分)を加えた金額で判定をする必要があります。

 次に、②についてみれば、令和6年4月1日以降の支出から上限が変更されます。したがって、3月決算法人以外の場合には、一つの事業年度に5,000円以下の基準と10,000円以下の基準の期間が混在することになることから、取扱いに留意する必要があります。

 
 
【国際税務教室】 CRSに基づく金融口座情報の自動的情報交換制度の現状

  国際的な租税回避や脱税に対抗するには、税務当局が納税義務者に係る国外の情報を入手する必要があります。そのため、各国が国外の情報を双方向的に交換する事が求められます。その際、効率的な情報交換が行われるよう、OECDが国際基準(共通報告基準- CRS : Common Reporting Standard 以下、「CRS」とします)を策定しています。現在、このCRSに基づく非居住者の金融口座情報(以下、「CRS情報」とします)の交換を自動的に行うといった制度に、100カ国を超える国が参加し、各国の税務当局は、原則として毎年9月末までに前年末時点のCRS情報を交換するといった運用がなされています。

 直近の国税庁の公表(※)によると、約253万件に及ぶ日本の居住者に係る(日本国外の)金融口座情報が95か国・地域から受領されています。その内訳をみると、個人口座が約250万件・残高10.9兆円。法人口座約3万件・残高5.5兆円となっています。他方、日本の非居住者(外国居住者)に係る(日本国内の)金融口座情報は、約53万件について78か国・地域の国税当局へ提供されています。

 受領された情報は、海外への資産隠しや国際的租税回避行為等への適切な対応のため、課税庁において、時系列の動向分析や、国外送金調書、国際財産調書、財産債務調書といった、法定される告知書・調書制度や、既に保有されている情報と併せて分析された上で、税務上問題があると見込まれる者に対して税務調査が実施されるなど、税務コンプライアンスの向上に活用されています。(※)令和4年事務年度 租税条約に基づく情報交換実績の概要(令和6年1月 国税庁)

 
 
残価設定ローンと残価設定リース、減価償却の違い

 2023年より、三菱UFJ銀行が残価設定型住宅ローン(※1)の取り扱いを開始し「住宅ローンに残価設定?」と驚かれた人も多かったことと思われます。

 今回は、事業用資産の導入に際し、最近では残価設定ローンや残価設定リースを利用する事例が多く見られますが、その場合の「減価償却」の計算に焦点を当ててみます。

 例えば300万円の車を5年ローンで購入する場合で、5年後の残価(買取補償額)が120万円とすると、毎月の支払額は(300万円-120万円)÷60回=3万円となります。ここで問題になるのは減価償却にあたり残価部分が対象になるかどうかです。結論から書くと、残価を差し引いた180万円ではなく、300万円をベースに減価償却を計算することになります。これは残価設定月にローン目的物を買い取ることが原則と考えられるからです。

 一方で、よく似たもので残価設定リースというものもあります。例えば300万円の車を5年リースにより取得する場合で、5年後の残価が120万円とすると、毎月の支払額は(300万円-120万円)÷60回=3万円となります。ここまではローンの場合と同じですが、減価償却の計算はローンの場合と異なり、残価を差し引いた180万円をベースに減価償却を計算することになります(法令48の21六)。これはローンの場合と異なり、リース期間終了後はリース会社にリース目的物を返却することが原則と考えられるからです。 

※1)三菱UFJ銀行の残価設定型住宅ローンでは、残価設定月以降、リバースモーゲージ型住宅ローンに移行し、死亡時には物件を処分・一括返済する仕組みになっています。

 
 
【国際税務教室】 非居住者の暗号資産等取引情報の報告制度の整備

  OECDにおいて策定された自動的情報交換に係る暗号資産報告枠組み(Crypto-Aseet Reporting Framework、以下「CARF」とします。)に基づき(※)、令和6年度税制改正において、「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備」が行われます。

 CARFは、国内の暗号資産等交換事業者に、非居住者の暗号資産等に係る取引情報を税務当局に報告することを義務付ける制度であり、租税条約に基づいた自動的情報交換の一つとされます。具体的に見れば、以下の通りです。

 国内の暗号資産等交換事業者は、利用者が暗号資産等取引を行う際に、利用者から①氏名(又は名称)、②住所(又は本店所在地)、③居住地国、④居住地国における納税者番号等を記載した届出書の提出を受け、所轄の税務署に、①~④の事項に加えて⑤その年の暗号資産等の種類ごとに、暗号資産等の名称、売買の対価の額の合計額、総数量及び件数についての情報を提出することが義務付けられます。提出された情報は、租税条約の情報交換規定により自動的に国税庁から非居住者の居住地国の税務当局に提出されます。

当該改正は、2027(R9)年に2026(R8)年分の取引について初回の情報交換を実施することが予定されていることから、2026(R8)年1月1日の施行が予定されています。暗号資産等交換事業者には、施行までの間に、暗号資産等取引利用者の税法上の居住地国等の特定、報告手続きの整備が求められます。(※)日本を含む48ヵ国・地域は2023年11月10日に共同声明を発表し、自国の法整備を進め2027年までに情報交換を実施するとしています。