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国内・国際税務、農業の会計・税務コンサルティングを行う税理士法人 成和。

 

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税理士法人 成和新着情報

【国際税務教室】 恒久的施設が負担する使用料と源泉徴収義務

  所得税法上、非居住者や外国法人に対して国内源泉所得となる使用料を支払う際には、支払者に源泉徴収義務が課せられています。海外に所在する日本企業の支店や工場などが、現地で支払う使用料に対する(日本の)源泉徴収義務の取扱いについて、迷う場合も少なくありません。

 使用料の源泉地については、権利を使用した国であるとする使用地主義といった考え方と、使用料の支払者の居住地国であるとする債務者主義といった考え方の二つが存在します。日本の国内法は使用地主義をとっています。他方、多くの租税条約においては債務者主義がとられています。わが国の国内法においては、(国内法と租税条約の規定が異なる場合には、租税条約の取り扱いによるとする)源泉置換規定が存在することから、債務者主義をとる租税条約の締結国内で日本の居住者が支払う使用料は、(国外で使用されるものであっても)国内源泉所得に該当することになります。それからすれば、使用料の源泉地について債務者主義をとる租税条約の締結国に所在する日本企業の支店や工場などが現地で支払う使用料は、原則的には、国内源泉所得として支払者に源泉徴収義務が存在することになります(※)。しかし、わが国が締結した租税条約の多くは、原則的には債務者主義をとりながらも、その使用料が使用料の受益者の恒久的施設によって負担されいている場合には、当該恒久的施設の所在地を使用料の源泉地とするといった例外規定を置いています。したがって、そのような租税条約による例外規定の適用を受ける場合には国外源泉所得となり、支払者に源泉徴収義務は存在しないことになります。

(※)置換規定の性格については、納税者の有利な場合にのみ適用される(課税できない)とする考え方も存在します。

 
 
インボイス制度導入の前にすることはなかったのか?

  2023年10月より、いわゆるインボイス制度がスタートします。

 これは、事業者が免税事業者から仕入れを行った場合に仕入税額控除を認めない、つまり免税事業者から仕入れを行った事業者が消費税計算において仕入税額控除を適用できないため、事業者の納める消費税が増えるという制度である。
 そのため、免税事業者から仕入れを行う事業者は、仕入先を課税事業者に変更したり、免税事業者と取引を続ける代わりに税負担を減少させるために取引価格の見直し(いわゆる値引き)を求めたり、自身も販売の価格見直しを行ったり・・・との対応に追われています。
 某自動車メーカーのように、第n次下請けに免税事業者がいるような場合、インボイスによりn-1次下請けの消費税の税負担が上昇した場合でも、最終的に車の販売価格が上昇することは考えにくいため、インボイスによる負担増はn-1次下請けが負担することになりそうですが、中小企業の場合は自身が免税事業者から仕入れを行うことがあるため、消費税の負担分を販売価格に転嫁することも予想されます。つまり、インボイスの導入により経済成長以外の理由による物価上昇が起こる可能性もあるのです。
 ただ、免税事業者における益税問題を解消するための手段としてインボイス制度を導入したことは評価できるが、例えば、現行1,000万円の免税点を現金主義の特例に合わせ300万円に引き下げたのちにインボイス制度を導入する方法もあったのではないか、という議論もありますが、インボイスによる影響を秋の夜長にじっくりと考えてみるのもよいのかも知れません。
 
 
【農業税務教室】 園芸施設(ビニールハウス等)の耐用年数

  作物の出荷期間の調整や天候に左右されない安定供給を目的に利用される園芸施設は、その主流がビニールトンネルや雨よけ施設から温室へと移っています。温室はガラスで被覆されるものもありますが、塩化ビニルや硬化プラスチック等により被覆される温室(以下、「ビニールハウス等」とします)を多く見受けます。

 このような農業用のビニールハウス等を新設した場合、耐用年数を何年にするのかについて迷う場合も少なくありません。農業用のビニールハウス等については、それが構築物に該当する場合には、別表一(※2)「構築物」の「農林業用のもの」に掲げられる耐用年数(骨格部分が金属造であれば、14年、木造であれば5年、その他のものであれば8年)を適用し、(構築物に該当せず)器具備品に該当する場合には、の「器具備品」の「11前掲のもの以外のもの」に掲げる耐用年数(骨格部分が金属造であれば、10年、その他のものであれば5年)を適用するものとされます(※1)。構築物、器具備品のいずれに該当するのかについて、どのように判断するのでしょうか。

 税務上、構築物は土地に定着する工作物とされます(※3)。したがって、園芸施設の土地への定着の有無にて、構築物に該当するか否の判断がなされることになります。ビニールトンネルや雨よけ施設等の簡易な施設から高度化されたビニールハウス等は、自然災害への備えのため強度が高められていることからも、基礎等により物理的に土地に固着されていることが一般的といえます。また、園芸作物の安定供給を目的として設置される園芸施設は一時的なものではなく、恒常的に設置されていることが多いものと考えます。したがって、そのような場合には、土地に定着する工作物といえることから構築物に該当するものと考えます。

(※1)国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/26.htm (※2)減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一(※3)法施令13②、所施令6②

 
 
【国際税務教室】 源泉置換規定とプリザベーション原則

  非居住者及び外国法人は国内源泉所得について課税を受けます。所得の源泉地を定める法規則はソースルールと呼ばれ、国内法では、所得税法161条及び法人税法138条において定められています。他方、ソースルールは租税条約においても定められることもあります。したがって、国内法と租税条約のソースルールが異なる場合も存在することになります。そのような場合、所得税法162条及び法人税法139条(以下、「源泉置換規定」とします)が、国内源泉所得につき「租税条約において国内法の規定と異なる定めがある場合には、租税条約の定めるところによる」と規定していることから、国内法上国内源泉所得ではない所得が、租税条約の定めにより我が国の国内源泉所得となり課税されることもあります。

 国内法と租税条約の適用に関しては、日本国憲法98条2項の規定に基づき、条約の規定が明確性と完全性の要件を満たしている場合には、条約が優先して適用されると解されている上で、通説として、課税要件法定主義の見地から、課税の根拠は国内法に基づく必要があり、租税条約の規定を根拠に課税を行うことはできないという考え方(以下、「プリザベーション原則」とします。」)が存在します。源泉置換規定とプリザベーション原則の関係はどのように考えればよいのでしょうか。置換規定の性格については、① 納税者の有利な場合にのみ適用される(課税できない)、② 租税条約上のソースルールを国内法に取り込む創設的な規定である(課税できる)、③ プリザベーション原則はソースルールには適用されないことの確認的な規定(課税できる)であるといった、三つの説が唱えられています。

 
 
税金のクレジットカード納付は公平か、不公平か

  2017年1月より国税のクレジットカード決済による納税が開始(地方税は以前から開始している)し、納税方法として普及してきたのではないか、と思われます。

 今回は、クレジットカード納付ができる種々の税金のうち、「所得税」に焦点を当てて公平か不公平か、という観点から見ていきたいと思います。

 いま、事業所得者と給与所得者の2人の申告者がおり、それぞれ年間の所得税が500万円であると仮定します。事業所得者はこの計算された所得税を納付する必要があり、クレジットカード納付も可能です。一方で、給与所得者は勤務先により源泉徴収をされているため、例えば400万円が源泉徴収されていれば、差引100万円の所得税を納付すればよく、こちらもクレジットカード納付も可能です。

 クレジットカード納付をすればポイントが付与され、還元率が0.85%以上のカードなら、手数料を差し引いても実質プラスになるため、クレジットカード納付をしたいと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし給与所得者は全体5,928万人のうち、年末調整のみで完結し確定申告を要しない者(上のように確定申告ができる者以外)が約3,500万人おり、これらの者はクレジットカード納付を選択する機会さえ与えられないのです。(注)数値は令和2年末

 一旦は平等にクレジットカード納付を選択する機会が与えられないのは不平等と考える意見もありますが、給与所得者に認められている年末調整(確定申告不要)こそ不平等であると考える意見もあります。視点が異なれば、それぞれの制度がよく見えるのかも知れません。