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国内・国際税務、農業の会計・税務コンサルティングを行う税理士法人 成和。

 

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税理士法人 成和新着情報

【農業税務教室】 卸売市場特例と家畜市場(インボイス制度)

  適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」とします)においては、事業者が行う事業の性質上、適格請求書等(以下「インボイス」とします)の交付が困難な取引も存在することから、一定の取引についてインボイスの交付義務を免除しています(※1)。卸売市場を通じて販売される生鮮食料品は、出荷者を特定することなく取引されることから、買い手は出荷者を把握することができません。したがって、インボイス制度では、卸売市場法に規定する卸売市場(以下、「卸売市場」とします)において行う生鮮食料品等の販売については、売り手(出荷者)のインボイスの交付義務を免除しています。この場合、買い手は卸売市場が発行する一定の書類を保存すること等により、仕入税額控除ができるものとされます(以下、「卸売市場特例」とします)(※2)。したがって、卸売市場における生鮮食料品の買い手は、出荷者がインボイスを発行できない免税事業者であったとしても、卸売市場が発行する一定の書類を保存すること等により、仕入税額控除をすることができます。このように、インボイス制度の下でも、卸売市場を通じた取引においては、免税事業者の出荷者に取引上の不利益が生じることはありません。

 他方、子牛の市場販売など、家畜取引法に規定する家畜市場における家畜の取引は、卸売市場特例の対象とされていないことから、売り手(出荷者)のインボイスの交付義務は免除されません(※3)。したがって、家畜市場における家畜の買い手は、出荷者のインボイスの保存が無ければ仕入税額控除ができません。このことから、インボイス制度の下では、家畜市場を通じた取引について、免税事業者の出荷者に取引上の不利益が生じることも想定されることから、注意が必要となります。

 

(※1)消法57の4① (※2)消令70の9②二イ(※3)家畜市場の取引は、買い手が出荷者を特定できる事が理由と考えます。

 
 
【国際税務教室】 海外赴任者が行うFX取引(デリバティブ取引)

  国境を越えて行われるFX取引や先物取引など、クロスボーダーで行う金融商品取引法の市場デリバティブ取引及び店頭デリバティブ取引の決済より生じる所得(以下、「デリバティブ所得」とします)の取り扱いが変更されています(※1)

 従来は、恒久的施設に帰属するデリバティブ所得を除き、非居住者又は外国法人に係るデリバティブ所得は、国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に該当すると取り扱われていたことから、例えば、海外赴任中の者が日本の証券会社を通じて行うFX取引から生じる所得については、国内源泉所得として課税されてきました。このような取り扱いは、国税不服審判所の裁決においても事例が存在しています(※2)。しかし、令和4年度税制改正の大綱において、取り扱いの明確化を行うとされたことを受けて、デリバティブ所得は国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に含まれないとする法整備が図られました(※3)。したがって、従前の取扱いが変更されています。

 この取り扱いの変更は、過去に遡って適用されるとされている(※1)ことから、過去のデリバティブ所得について所得税を納税しているなど、税金の納めすぎにとなっている者の場合、更正の請求を行うことにより、納めすぎた税金の還付を求めることができます(※4)

(※1)「クロスボーダーで行うデリバティブ取引の決済により生ずる所得の取扱いについて」令和4年1月 国税庁

(※2)平成31年3月25日東京裁決(裁決番号:(所)平30-115)(※3)改正後の所得税法施行令280条2項二号

(※4)所得税又は法人税の還付を受けるための更正の請求は、法定申告期限から5年以内の場合に限られます。

 
 
はずれ馬券は必要経費に含められるのか?

  競馬で6,400万円の大当たりしたお笑い芸人が、税務申告後に、税務調査が入り高額追徴課税されたというニュースが話題になっております。

 競馬の払戻金は、原則、一時所得となるため、「総収入金額-収入を得るために支出した金額」が年間50万円を超えていれば確定申告が必要になります。この「収入を得るために支出した金額」とは、その収入を得るために直接要した金額をいうため、競馬の場合は当たり馬券の購入費用のみがこれに該当し、はずれ馬券の購入費用は該当しないということになります。

 今回のことは、税務申告の際にはずれ馬券の購入費用を含めていたことが原因でした。

 しかし、はずれ馬券の購入費用が必要経費として認められた例(※)もあるため、競馬ファンにとっては納得のいかないルールのようである。

 この点、はずれ馬券の購入費用が必要経費として認められる雑所得に該当するケースについて「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して定めた独自の条件設定と計算式に基づき…年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入…年間を通じての収支で多額の利益を上げ…回収率が…100%を超えるように馬券を購入し続けてきたことが客観的に明らかな場合」(国税庁:平成30年7月)に限るとしているため、一般の競馬ファンの方は、従来通り一時所得として申告をすることになります。

(※)最高裁平成29年12月15日判決は「本件の競馬の馬券の払戻金については、馬券購入の態様や利益発生の状況等から雑所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費に該当する」としている。

 
 
【農業税務教室】 農業経営収入保険の保険金等の見積計上誤り

  農業経営収入保険の保険金及び特約補填金のうち国庫補助相当分(以下、「保険金等」とします)は、保険期間の年又は事業年度(以下、「保険期間の課税年度」とします)の確定申告期限後(すなわち、保険期間の翌課税年度)に金額が確定し支払われます。この保険金等について、税務上は、保険金等の額が確定した日の属する課税年度の総収入金額又は益金(以下、「収益」とします。)ではなく、保険期間の課税年度の収益として、保険期間の課税年度の確定申告に際して見積計上を行う事とされています(※)。見積計上を行うという性質上、見積計上額と実際に支払われる保険金等との間に差額が生じる場合も想定されます。そのように差額が生じた場合、税務上はどのように取り扱うのでしょうか。

原則的な取り扱いによれば、保険期間の課税年度の所得の金額を是正することになります。具体的にみれば、① 見積計上額が実際の保険金等の支払額を上回っていたことにより、税額を多く申告している場合には、「更正の請求」を行い、正しい税額への訂正を求めることができます。また、② 見積計上額が実際の保険金等の支払額を下回っていたことにより、税額を少なく申告している場合には、「修正申告」を行い、正しい税額に修正する必要があります。

原則的な取り扱いは上記の通りですが、それには一定の手間もかかることから、見積計上額と実際に支払われた保険金等の金額との差額が少額である場合には、保険期間の課税年度の所得金額を是正することに代えて、保険期間の翌年又は翌事業年度の所得の金額を計算する際、当該差額を減算又は加算することにより調整することができるとされています(※)

(※)「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて」農林水産省経営局保険課長29経営第3611号

 
 
【国際税務教室】所得税法上の為替差損益の取り扱い 

  20年ぶりのドル高・円安となるなど、円が記録的な安値をつけている現在。所有する外貨を円転する取引も散見されます。その場合、税務上の取り扱いに注意が必要です。

 所得税法上、居住者が外貨建取引を行った場合には、取引時の外国為替の売買相場により換算した金額により所得の金額を計算する(※1)とされていることから、円転時の額と外貨の購入額との差額は所得(※2)として認識する必要があります。したがって、例えば、銀行の外貨預金を解約し、円で払出を行った場合は、所得税法上、為替差損益を認識する必要があります。

 他方、外貨預金を解約し、同一の通貨で再度預入れる場合にも、為替差損益を認識する必要があるのでしょうか。法令によれば、同一の金融機関に、同一の外国通貨で、継続して預入れる場合には、(収入が実現していないことを理由として)外貨建取引に該当しないと例示されています(※3)。したがって、同一の外国通貨で、別の金融機関の預金に預入を行っている場合においても、収入が実現していないことから、為替差損益を認識する必要はありません(※4)

 これに対して、外貨預金を解約し、同一通貨建ての投資信託を購入するなど、通貨は同一であったとしても新たな資産への投資を行った場合や、別の通貨建ての外貨預金に預入するなどした場合には、収入が実現したものと認識され、それら取引は外貨建取引に該当することから、為替差損益を認識することが必要となります。

(※1)所法57条の3第1項 (※2)為替差損益の所得分類は雑所得という考え方のほか、譲渡所得という見解もあります。(※3)所令167条の6第2項(※4)国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/39.htm