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税理士法人 成和新着情報

最近話題の「300万円問題」って、どういう問題でしょうか

  2022年(令和4年分)の確定申告から、副業収入が300万円以下だと大増税になる可能性があり、これが「300万円問題」といわれるものです。

 この改正には紆余曲折があり、当初は副業の収入が300万円以下である場合は、事業所得ではなく雑所得とする、というものであったが、この改正案に対し「国が推奨する働き方改革の推進に逆行する」など7,000を超える反対意見が出され、最終的に①記帳および帳簿書類の保存があるかどうか(必須要件)、②副業の収入が300万円を超えること、の2つの要件を満たす場合に、その副業が事業所得とされることになりました(※1)

 この改正により、これまでは副業を事業所得として申告していた場合であっても、今後は雑所得と判断されるケースが多くなるものと考えられます。これによる大きな影響は、(イ)副業で損失が生じても他の所得との損益通算ができなくなること、(ロ)事業所得で認められている最大65万円の特別控除(青色申告の場合)が受けられなくなること、ではないでしょうか?

 副業の収入が僅少で、もともと雑所得としていた者にとっては、何も変わらない改正ですが、そこそこの収入があり事業所得としていた者にとっては「事業所得として申告を続けたいのであれば、もっと頑張りましょう」とも受け取れる厳しい改正であると感じられます。

(※1)副業の収入が300万円を超えていても社会通念上事業とは言えないものは事業所得と認められない場合もあります。また、副業の収入が300万円以下であっても、主たる所得の収入金額の10%以上である場合など一定の場合には、事業所得と認められる場合があります。

 
 
【農業税務教室】 自己が育成・成熟させた生物の取得価額の取扱い

  農業においては、成熟した繁殖牛や搾乳牛、成木となった果樹など、特有な減価償却資産があります。生物(※1)とされるこれらの減価償却資産は、購入により取得する場合もありますが、自己が育成・成熟させる場合もあります。自己が育成・成熟させた生物の場合、取得価額はどのように認識するのでしょうか。

 減価償却の基礎となる取得価額は、資産の取得形態に応じて定められています。その中で、自己が育成・成熟させた生物の取得価額についてみれば、㋐ 種付費・出産費・種苗費等の価額(引取費用含む)㋑ 育成・成熟させるために要した飼料費、肥料費等の材料費に、労務費及び経費の額を加えた価額、㋒ その他、事業の要に供するために直接要する費用の額の合計額とされています(※2)。これら、㋐㋑㋒の費用は、販売される農畜産物(棚卸資産)に要する費用と共通することが一般的です。したがって、㋐㋑㋒の合計額を算出するためには、それら共通する費用を、育成・成熟に係る費用と、販売される農畜産物に係る費用のそれぞれに配分するといった作業が必要となります。

 実務的には、① 期中は育成・成熟に係る費用と、販売される農畜産物に係る費用とを区別することなく、すべてを一括して費用勘定で経理しておき、② 決算整理において、育成にかかる原価を按分して「育成費振替高(製造原価報告書末尾の控除項目)」として製造原価から除外し、「育成仮勘定(資産勘定科目)」に振り替えを行います。そして、③ 成熟した生物については、成熟日において「育成仮勘定」から「生物」勘定に振り替えを行い、減価償却を開始することになります(※3)

(※1)法令13条九号、所令6条九号(※2)法令54条1項三号、四号、所令126条1項三号、四号(※3)一般社団法人 全国農業経営コンサルタント協会 「農業の会計に関する指針」 5(2)

 
 
【国際税務教室】 海外子会社からの利息に対する消費税の取扱い

 日本の低金利を背景として、海外子会社の資金需要に対して、日本の親会社からの貸付で対応するケースも見られます。親子ローンなどと呼ばれるこのような取引は、移転価格税制上、適正な金利を設定する必要がある事から、親会社は海外子会社から利息を徴収していることが一般的といえます。このような場合、親会社の消費税申告に際して、注意が必要です。

 貸付利息は消費税法上、非課税取引に該当します(※1)。この場合、債務者が非居住者である場合には輸出免税の取引とされる(※2)ことから、仕入税額控除の計算を行うにあたっては、当該貸付利息は、課税売上割合の分母だけではなく、分子にも含めることができます(※3)。この取り扱いは「非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例」(以下、「特例」とします)と呼ばれていますが、非居住者の債務者から徴収する全ての利息に無条件に適用されるものではありません。適用には、輸出されたことについて証明がされていることが必要となります。

 具体的に見れば、約書等において、①貸付者の名称及び住所等、②貸付年月日、③貸付内容、④利息(利率)、⑤借入者の名称及び住所が記載されている場合には、当該貸付利息は輸出取引として証明がされたものとして、特例の適用ができます(※4)

 親子ローンの場合、口頭での契約に留まり、金銭消費貸借契約書(Loan Agreement)の作成がされない場合も想定されます。特例の適用については、注意が必要です。

(※1)消法6条1項、(※2)消法7条1項5号、消令17条3項、(※3)消法31条、(※4)消規5条1項4号

 
 
ガソリンスタンドにおける品転

  最近、セルフのガソリンスタンドが一般化してきたため、有人ガソリンスタンドにおいて事業者カード(掛カード)を発行してもらい、月末にガソリンスタンドより請求書が送られてくる、という取引形態をあまり見なくなりました。

 今回は、セルフが普及する前の昔話を。

 この、掛カードにより給油する際には、ガソリンスタンドは車の車番、油種をPOSに入力してから給油するのですが、その際に「品転」という脱税に繋がる行為が散見されておりました。

 品転とは、実際に受けたサービスと異なる内容の請求書を発行する行為で、例えばハイオクガソリンを給油したにもかかわらず、請求書に軽油の記載をするような行為をいいます。

 具体例の1つとして紹介すると…レギュラーガソリン150円/ℓ、軽油120円/ℓとします。

 通常レギュラーガソリンしか給油しない会社の従業員が、会社の掛カードで自分の四輪駆動車に軽油50ℓを給油した場合、そのまま請求書に記載されたら会社に不正使用が発覚されるため「品転」を行い、営業車にレギュラーガソリン40ℓを給油したことにした。

 この行為の問題点は、従業員の不正行為(業務上横領)にガソリンスタンドが加担しただけでなく、会社においても、この場合は消費税の納税が少なくなる(脱税)。通常、会計事務所は顧問先法人の営業車の運行記録の管理はしないため、不正行為に気づかず申告をしてしまい、知らないところで不正に加担していることであろう。

 しかし、最近ではこのような不正は減少しており、さらに来秋導入されるインボイス制度が始まると、このような不正が難しくなるため、不正防止に一役を担うものと理解すれば、インボイス制度も決して悪いものでは無いのかも知れない。

 

 
【農業税務教室】 従事分量配当と法人事業概況説明書の従事員等

  財務省令において、法人の事業等の概況に関する書類の法人税確定申告への添付が定められている(※1)ことから、実務上、確定申告書には「法人事業概況説明書」(以下、「概況書」とします)を添付することが一般的です。概況書は法人税申告書のみではわからない当該法人の事情や状況など、事業等の概況を説明するための書類と位置付けられます。記載項目は、事業の内容から、経理の状況、事業形態など多岐にわたりますが、その中のひとつに、当該法人の期末の従事員等の人数を記載する項目があります。

 従事分量配当制を採用する農事組合法人において、この期末の従事員等の人数の記載にあたり判断に迷う場合があります。当該項目には、役員や使用人をはじめとした当該法人の従事員の人数を記載する必要がありますが、従事分量配当を受ける組合員は、ここでいう従事員に該当するのでしょうか。

 国税庁の「法人事業概況説明書の書き方」の記載要領によれば、当該欄には役員、使用人をはじめ、職種ごとの人数を記載するものとされ、当該職種の例として、「工員、事務員、技術者、販売員、労務者、料理人、ホステス等」が挙げられています。この事から、ここでいう従事員とは、役員や使用人に限られず、当該法人の業務に従事するその他の者を含む概念と言えます。また、法人税法によれば、従事分量配当は、農事組合法人の「事業に従事した程度に応じて分配」されるものとされています(※2)。したがって、法人税法は従事分量配当を受ける組合員を、当該農事組合法人の事業に従事する者と認識しているものと考えます。

 これらからすれば、農事組合法人から従事分量配当を受ける組合員は、概況書の「従事員等」に該当するものと考えられます。

(※1)法規35条五号、(※2)法法60条の二第2項