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国内・国際税務、農業の会計・税務コンサルティングを行う税理士法人 成和。

 

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税理士法人 成和新着情報

【農業税務教室】 生物の減価償却の開始時期(成熟の時)

  事業活動に用いられる資産で、1年以上にわたり使用され、時の経過によって価値が減少していくものの中で、税法に限定列挙されているもの(※1)は、減価償却資産とされます。農業においては、果樹などの永年性作物や繁殖用の家畜なども、農業用の機械と同様に減価償却資産(生物)となります。減価償却資産は法定耐用年数の期間にわたって減価償却費として損金(必要経費)に算入されますが、実務上、いつの時点から減価償却を開始するかについて、迷う場合も少なくありません。

 減価償却は、当該資産を本来の目的のために使用を開始した日(以下、「事業の用に供した日」とします)から行うことになりますが、事業の用に供したか否かについては、業種・業態・その資産の構成及び使用の状況を総合的に勘案した判断が必要となります。実務的には、生物の場合、事業の用に供した日は、成熟の時(※2)とされています。具体的に見れば、家畜のうち ①乳牛については、初産分娩の時、②繁殖用の家畜については、初産のための種付けの時、③永年性作物については、当該果樹等の償却額も含めて概ね収支相償うに至る時が、成熟の時と考えられます(※3)。このように、永年性作物や繁殖用の家畜が成熟しているか否かは、個々の生物の実態に伴った判断が必要となります。しかし、そのような判断が困難な場合も想定されます。そのような場合には、法令解釈通達(※4)に記載されている生物の年齢や樹齢をもって、成熟の時とすることもできるものとされています。
 
(※1)所令6条、法令13条 なお、限定列挙されていない生物(バラや採卵用鶏など)は、(減価償却資産ではなく)税法固有の繰延資産として償却を行います(農業の会計に関する指針 5.(1)一般社団法人 全国農業経営コンサルタント協会)。(※2)所基通49-27、法基通7-6-12 (※3)農業の会計に関する指針 5.(3)(※4)所基通49-28、法人税基本通達7-6-12
 
 
【国際税務教室】 短期滞在者免税における183日基準の計算方法について

  給料に対する課税は、原則的には勤務を行っている国においてもなされます。それによれば海外出張を行った場合、出張期間に対応する給与は出張先の国においても課税所得となります。しかし、租税条約に規定される条件を満たす場合には、免税措置を受けることができます。「短期滞在者免税」と呼ばれるこの租税条約による免税措置を受けるためには、条約に規定される一定の条件を満たす必要があり、その条件の一つに、183日以下の滞在といった、いわゆる「183日ルール」が存在します(※)。実務上、この「183日」の計算の仕方について迷う場合が少なくありません。

 世界各国で締結される租税条約は、①「OECD条約モデル」、もしくは ②「国連条約モデル」のいずれかをひな形として作成される傾向があります。「183日」の計算方法についてみれば、①は「当該課税年度(暦年)に開始又は終了するいずれの12箇月の期間」(入国または出国から連続する12ヶ月間)をベースとして計算する(以下、「OECD条約モデル型」とします)のに対して、②は「当該課税年度(暦年)」をベースとして計算(以下、「国連条約モデル型」とします)します。

実際の条約について確認すれば、日米租税条約はOECD条約モデル型であるのに対して、日中租税条約は国連条約モデル型となっています。「短期滞在者免税」の適用に際しては、このように条約により183日の計算方法に相違があることに留意することが必要となります。

(※)通常、その他の条件として、支払者基準(給料が勤務地国の企業等から支払われていないこと)、負担基準(給料が勤務地国の駐在員事務所等で負担されていないこと)が存在します。

 
 
退職金について考える

  フジテレビが50歳以上かつ勤続10年以上の社員を対象に希望退職者の募集を発表し、優遇措置として、通常の退職金に加え特別加算金(2018年希望退職時には最大でプラス7千万円であった)が支給されることが、今年1月に発表されました。同社は90億円を退職金による特別損失として計上する予定なので、60人程度が応募しているとの報道より推計すると、1人当たり1億5千万もの退職金を受け取ることになります。

 仮に勤続年数30年であった者が1億円の退職金を受け取った場合、税金は1,887万9,900円(所得税・復興特別税は1,462万9,900円、住民税は425万円)となります。一方で、これが退職金ではなく給与であれば、税金は4,995万7,300円(各種控除は考慮しない)となり、給与課税に比べ相当優遇されているのがわかります。

 これは「退職所得は老後の生活保障的な最後の所得であることにかんがみ、その担税力は他の所得に比べてかなり低い」(昭和42年12月政府税調中間答申)との考えにより税計算に優遇措置が設けられているためである。

 一般的には老後資金の目安は3,000万円だといわれています(総務省の家計調査報告などを参考に生命保険会社等が試算している)。これと比較すると、このケースのような退職金全額を、老後の生活保障のために優遇規定を受けるが妥当なのか・・・という議論もあります。

 退職金制度のない会社が全体の2割に達する今日において、退職金に関し過度な優遇規定を残したままでよいのか、考えてみる必要がありそうです。

 
 
【農業税務教室】 農業経営基盤強化準備金制度の対象者の要件の変更(追加)

  2022年(令和4)年4月1日以降に開始する事業年度から、農業経営基盤強化準備金(以下、「準備金」とします)制度の対象となる者の要件が変更(要件が追加)されます(※)

 準備金制度とは、経営所得安定対策等の交付金を活用して、計画的に農用地、農業用の建物・機械の取得がなされるように、税制面から農業者を支援する特例措置であり、原則的に課税対象とされる交付金の額について、一定の要件を満たす農業者が、所定の手続きにより当該交付金を準備金として積立てた場合には、当該積立額を損金(必要経費)とすることができるといったものです。

 これまで、準備金制度の対象者は、①青色申告を行う、㋐認定農業者である、個人もしくは農地所有適格法人、又は、㋑認定新規就農者(個人)とされておりました。変更後は、これに②人・農地プランに位置付けられた中心経営体である事という要件が追加されます。したがって、変更後は、①かつ②の要件を満たした、㋐又は㋑の農業者が準備金制度の対象者とされます。

 「人・農地プラン」とは、農業者の高齢化・耕作放棄地の増加等といった課題へ対処するため、今後の地域農業の中心となる経営体や、将来の地域農業の在り方などを、地域の話し合いに基づいて明確化したもので、市町村により公表されています。しかし、実務的には、人・農地プランの中で地域の中心となる経営体として位置付けられているとしても、何らかの証明書が発行されるといったこともないことから、自身が中心的な経営体か否かについて、認識が曖昧な場合が散見されます。したがって、引き続き準備金制度を活用する場合には、自身が中心的な経営体であるのか否かについて、経営農地が所在する市町村への確認が必要といえます。

(※) 個人の農業者の場合には、令和5年分の所得税からの適用となります。

 
 
【国際税務教室】 外国税額控除の適用時期(所得税法)

  日本国内の証券会社を通じて外国の株式や債券などに投資を行う者も散見されます。特定公社債とされる外国の債権の利子(※1)や上場外国株式から配当(※2)を受け取ることにより、確定申告を行うこともあるかと考えます。そのような場合には、外国税額控除の適用を受けることができます。外国税額控除とは、国際的二重課税を防止することを目的とした制度であり、所得税の場合、対象となる外国税額は、外国の法令に基づいて外国又はその国の地方公共団体によって、個人の所得に課税される税額が対象となります。法令上、外国税額控除は、居住者が源泉地国に外国税額を「納付することとなる日」の属する年分に適用されます(※3)が、実務的には、この適用時期について迷う場合も少なくありません。

 「納付することとなる日」とは、租税債務が確定する日と解されており、具体的には、①申告納税方式による場合には、申告書を提出した日、②賦課課税方式による場合には、賦課決定の通知があった日、③源泉徴収による場合には、対象の所得が支払われた日の属する年分を適用時期として外国税額控除を行います。なお、継続適用を条件として、納付が確定した税額について、実際に納付した日の属する年分に適用を受けることも認められています(※4)
 また、外国税額控除は、租税条約が締結されていない国で課税された所得税についても、期限後申告、修正申告、更正の請求においても適用することができます。
(※1)一般公社債の場合には「差額調整方式」による源泉分離課税とされることから確定申告は不要となります。(※2)源泉分離課税の選択をすることができます。(※3)所得税法95条1項(※4)所得税基本通達95-3