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税理士法人 成和新着情報

インボイス制度による免税事業者への影響②

  欧州では付加価値税と不可分一体であったインボイスを、日本では消費税導入の際に見送ったことは、前回でお話したことと思います。(日本ではインボイス制度に代えて「請求書等保存方式(※)」という簡便ではあるが問題のある制度が導入されました。)

 この請求書等保存方式で生じる問題点として挙げられるのが「益税」が生じることです。

 例えば、消費税導入前に、A商店が400円で仕入れたものを500円で販売し、100円の利益を得ていたとします。しかし消費税導入後(ここでは10%とします)同じ商品を仕入れるためには440円必要となり、同じ利益を確保するためには550円で販売しなければならなくなりました(預かった消費税50円―支払った消費税40円=10円が事業者の納める消費税となるため、550円―440円―10円=100円と同じ利益を得られます)。

 ここで、もしA商店が免税事業者であった場合、どうなるのでしょうか?

 その場合でも、その商品を仕入れるには440円必要であるため、同じ利益を確保するためには、40円値上げし540円で販売しなければなりません。また免税事業者であるのに10%値上げし550円で販売する場合もあります。前者の場合は100円が利益となりますが、後者の場合は110円が利益となり、免税事業者が消費税計算をすると10円利益が生じてしまうのです。

 次回は、A商店から購入したB商店側の問題点を見ていきます。

(※)請求書等保存方式とは帳簿を保存し、取引の相手方が発行した請求書等という客観的な証拠書類の保存を仕入税額控除の要件とする経理方法をいう。

 
【国際税務教室】 海外の口座で受け取る預金利息

  社会経済のボーダレス化により、日本に居ながら国外の金融機関において資金運用を行うケースもみられます。このような場合、国外の口座で受け取る預金利息については、利子所得として確定申告をする必要がある事から、注意が必要です。具体的に見れば、以下の通りです。

 所得税法上、国内に生活の本拠がある者は居住者とされます。その場合(※1)、全世界の所得が課税の対象となることから、国外の口座で受け取る預金利息も課税の対象となります。

 国内の口座で受け取る預金利息は、原則として、20.315%の税率にて所得税・復興特別所得税及び地方税が源泉徴収されることにより課税関係が完結となる源泉分離課税の対象とされていることから(※2)、あらためて確定申告をする必要がありません。他方、国外の口座で受け取る預金利息は、日本の所得税等は課税されていないことから、源泉分離課税の対象とされておらず(※2)、総合課税の利子所得として確定申告を行うことが必要となります(※3)

 国際的な租税回避や脱税に対抗するため、各国の税務当局が国際基準に従って非居住者の金融口座情報を自動的に交換する制度が、ワールドワイドに運用されています。わが国の初回の交換においては、64ヵ国・地域から日本の居住者に係る(日本国外の)金融口座情報が、55万件受領されており(※4)、それには利子等の年間受取総額といった情報も含まれています。このような制度を踏まえた上で、適正な申告が求められます。(※1)所得税法上の非永住者は除きます。(※2)措法3条 (※3)給与所得者及び公的年金受給者で一定の要件を満たす場合には、申告が不要な場合があります(所法121条)。(※4)2018年(平成30年)10月 国税庁「CRS情報の自動的情報交換の開始について」

 
インボイス制度による免税事業者への影響①

  2019年10月に消費税率が10%に引き上げられ、1年半が経過しました。

 この増税の陰に隠れがちですが、2023年10月より、日本でも適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。この制度の導入こそ、多くの個人事業者や中小企業にとっては、増税よりインパクトが大きいのではないでしょうか。

 そこで、今月号より数回にわたり、消費税について考えてみたいと思います。

 日本における消費税の議論は1970年代より始まり、1989年竹下内閣により導入されました。日本の消費税は欧州の付加価値税(VAT)を倣って設計された制度ではあるが、1978年大平内閣、1886年中曽根内閣でそれぞれ廃案となった経緯があるため、欧州では付加価値税と不可分一体であったインボイスを、日本では導入を見送らざるを得なかったという背景があります。

 そもそも、このインボイスとは一体何であろうか?

 消費税は、事業者が産み出した付加価値に着目して課税される税で、具体的には売上金額に含まれる消費税から、仕入金額に含まれる消費税を差し引いた金額を、事業者が国に納めるもので、この仕入金額に含まれる消費税を差し引く技術を「仕入税額控除」といい、仕入税額控除を正確に行うために必要な資料が「インボイス」である、と理解していただければ大丈夫です。(次稿以降で、現行制度の問題点やインボイス制度の導入に伴う影響などを、数回にわたり解説します。)

 
【国際税務教室】 海外で職務に従事する役員に対する課税

  社会経済のボーダレス化、及びオンライン化により働き方が多様化しています。なかには、海外に居住する者を取締役等の役員に登用し、オンライン会議などの手法により、海外に居ながらにして法人の経営に従事させるといったケースもみられます。その場合、当該役員の報酬に対する所得税の取り扱いは、どのようになるのでしょうか。

 所得税法によれば、国内に生活の本拠がない者は非居住者とされ、日本国内で発生した所得(以下、「国内源泉所得」とします)についてのみ課税を受けます。したがって、非居住者の所得税について検討する場合、対象となる所得が国内源泉所得に該当するか否かの判定が重要となります。人が役務を提供することにより得る所得は、何を基準として判定するのでしょうか。

 所得税法上、給与などに代表される人的役務の提供の対価は、原則として役務の提供地(勤務地)によって所得の発生地の判定がなされます。したがって、非居住者の所得が使用人としての給与に該当するときには、日本国内で勤務を行う場合に限り課税所得となります。

 他方、人的役務の提供の対価の中でも、役員報酬など、役員としての人的役務の提供の対価は、その業務の特殊性を理由として、原則的な取り扱いとは異なり、当該法人の本店所在地国によって所得の発生地の判定がなされます。したがって、非居住者の対象となる所得が、本店所在地が日本である法人の役員の資格により取得する役員報酬である場合には、当該役員としての業務が、オンライン等により日本の国外で行われていたとしても、国内源泉所得として課税(20.42%(復興特別所得税含)の源泉徴収)の対象となります。

 
2か所から給与を受ける場合の個人住民税について

  2018年1月31日に厚生労働省が定めたモデル就業規則に、副業と兼業が追加されたことにより副業が認められる風潮になり、最近では新型コロナウイルス感染症の影響により、就業規則で副業を禁止していた事業所も、従業員の生活を守るため副業を解禁し始めました。                  (ここでは、副業=ほかの事業所からの給与(従たる給与)とします)。

 副業の給与収入が20万円を超えると、確定申告をすることで、所得税と個人住民税の清算が行われ、個人住民税(主たる給与と従たる給与を合算して計算されます)は原則として主たる事業所の給与から毎月天引き(特別徴収)されます(地方税法第321条の4①④注1)

 法律上、給与に係る個人住民税は、特別徴収を原則としつつも、実は・・・自治体によってその取扱いには温度差があります。例えば、A社(主たる事業所)からの給与のほか、B社(従たる事業所)からも給与がある場合、「市民税・都民税申告書」表面の事務処理欄に「A社以外の給与分は普通徴収を希望します」と記載することで、副業であるB社の給与に係る個人住民税は普通徴収を選択できます(東京都X市の場合)。この方法を選択することで、主たる事業所が副業を禁止していても、副業していることを隠すことができてしまうのです。

 従来から副業を盛んに行う地域性からなのかはわかりませんが、租税の徴収方法は法律の規定に則り行い、地域により異なる運用がされることは望ましいものではないと考えられます。

(注1)この規定により、主たる給与以外の収入の有無が主たる事業所に通知されるため、就業規則で副業を禁止している事業所においては、許可を受けずに副業をした場合には、問題が生じます。