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国内・国際税務、農業の会計・税務コンサルティングを行う税理士法人 成和。

 

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税理士法人 成和新着情報

【農業税務教室】 収入保険の収益の計上時期

 税務上、保険金や共済金を受け取る場合、原則的には、それらの金額が確定した日の属する年又は事業年度分(以下、「課税年度」とします。)の総収入金額又は益金(以下、「収益」とします)とされます。しかし、農業経営収入保険(以下、「収入保険」とします)は、例外的な取り扱いとなることから、注意が必要です。

 収入保険の取り扱いをみれば、保険金及び特約補填金のうち国庫補助相当分(以下、「保険金等」とします)は、保険期間の課税年度の確定申告期限後(すなわち、保険期間の翌課税年度)に金額が確定し支払われます。この保険金等について、税務上は、保険金等の額が確定した日の属する課税年度の収益ではなく、保険期間の課税年度の収益として、保険期間の課税年度の確定申告に際して見積計上を行う事とされています(※)

 同種の取り扱いは、必要経費又は損金(以下、「費用」とします)に算入される損失の額と対応関係にある保険金にもみられます。このような保険金に対して原則的な取り扱いを適用した場合、損失の額と収益の計上時期にズレが生じ得ます。そのような事態は適当ではないことから、所得税基本通達51-7では、損失の生じた年分の確定申告期限までに保険金の金額が確定していない場合には、保険金の金額を見積り、当該見積額を損失額から控除するとしています。また、法人税法上も、適正な期間損益の算定という観点から、法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」である「費用収益対応の原則」に従い、損失とそれに対する保険金との間に、対応関係を求めることが必要と解されています。

 収入保険は農業者の収入減少を補償対象とするものであり、費用との対応関係が明らかといえます。したがって、収入保険のこのような税務上の取り扱いは、損失の額と対応関係にある保険金の取り扱いと平仄をあわせるものと考えます。(※)「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて」農林水産省経営局保険課長29経営第3611号

 
 
【国際税務教室】 輸出免税となる取引

  海外の事業者へ物品の譲渡を行う場合、消費税の取り扱いに迷うことも少なくありません。

 消費税法上、物品の譲渡を行う場合、当該物品の譲渡が国内取引に該当するときには、課税の対象となります。他方、物品の譲渡が国内取引に該当する場合であっても、その物品が輸出される場合には、消費税が免税(消費税の課税の対象から除外することに加えて、その仕入れに含まれていた消費税額を控除・還付することにより、実質的に税負担をゼロとすること。以下、「輸出免税」とします。)とされます。それでは、どのような取引が輸出に該当するのでしょうか。

 消費税法上、輸出とされる物品の譲渡とは、当該物品を「外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引き渡しが行われるものをいう」(※1)と解されています。したがって、外国に仕向けられた船舶又は航空機への積み込みよりも前の段階において、買主に目的物の引き渡しが行われるといった取引は、仮にその後、当該物品が通関され、外国に仕向けられた船舶又は航空機搬入されているとしても、消費税法上の輸出には該当しないと考えられることから、輸出免税の取り扱いは受けられないものと考えられます。

 このように、貿易取引によって海外に物品の譲渡を行うすべての場合において、輸出免税が適用されるというわけではなく、輸出免税の適用には、当該貿易取引が消費税法上の輸出に該当する必要がある(※2)ことに注意が必要といえます。

(※1) 東京地判平成18年11月9日 (※2) 加えて、免税の適用を受けるためには、消費税法において定められた輸出取引等の証明がされたものといった条件を満たす必要があります。

 
年間110万円の贈与税非課税がなくなる!?

 令和3年度税制改正大綱(2020年12月10日自由民主党・公明党)において、相続税・贈与税について「諸外国の制度を参考にしつつ…現行の相続時精算課税制度(※1)と暦年課税制度のあり方を見直すなど…資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」と明記されました。

 例えば、息子へ資産を生前贈与する場合を考えてみます。

 <相続財産に含める生前贈与財産の範囲>

 日本(暦年課税) 相続開始前3年以内

 日本(相続時精算課税) 精算課税選択後

 (参考)アメリカ 一生涯

 (参考)フランス 一定期間(15年)

 暦年課税を選択すれば、相続開始前3年以内の贈与財産しか相続財産に含めないため、生前贈与と相続では税負担が大きく異なり、資産移転の時期に中立ではないが、相続時精算課税を選択すれば、選択後は、生前贈与と相続で税負担が変わらず、資産移転の時期に中立であるといえます。

 一生涯の生前贈与と相続で税負担が変わらないアメリカ、一定期間の生前贈与と相続で税負担が変わらない欧州の制度を参考にするとあるため、わが国の今後の方向性は、暦年課税を縮小あるいは廃止し、相続時精算課税に一本化されると考えられるため、今後の議論に注目したい。

(※1)高齢世代が保有する資産を、消費意欲の高い若年世代への移転を促すことを目的に平成15年度税制改正で導入された。いったんこの制度を選択したら、それ以後暦年課税を選択できなくなります。

 
【農業税務教室】 補助金や助成金の収益への計上時期

  農業経営においては、補助金や助成金等の交付を受けることも少なくありません。その場合、当該補助金や助成金等について、いつの時点において収益(益金)に計上するのでしょうか。

 法人税法上、収益(益金)の計上時期は権利確定主義がとられていることから、補助金等の場合には、交付が決定された日の属する事業年度に収益(益金)計上することが原則的な取扱いとなります。ただし、実務的には、①具体的な経費を補填するための補助金や、②肉用牛免税の対象となる生産者補給金等のように、原則的な取扱いとは異なる取扱いとなる補助金等も存在することから、注意が必要です。

 ①についてみれば、このような補助金は、交付の原因となる経費の支出に当たり、あらかじめ補助金等による補填を前提とした所定の手続きがとられ、その手続きのもとに経費の支出がなされることにあることから、その交付の原因となった経費の発生があった日の属する事業年度において、(補助金等の交付が決定されていない場合においても、交付額を見積もることにより)収益(益金)計上することになります(※1)。このように処理されることにより、収益(益金)と費用(損金)の対応関係が保たれることになります。

 また、②の場合、(肉用牛の取引価格が一定の価格を下回る場合に交付される)生産者補給金等が交付されているケースにおいて、肉用牛売却所得の課税の特例(※2)を適用するに際しては、売却金額は当該補給金等の額を加算した金額とされることもあることから、生産者補給金である「肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)」や「肉用子牛生産者補給金」は、肉用牛を売却した日において収益(益金)計上することが一般的です(※3)

(※1)法人税基本通達2-1-42 (※2)租税特別措置法67の3 (※3)他方、肉用牛肥育の経営悪化を背景とした「肥育牛経営等緊急支援特別対策事業奨励金」については、原則的な取扱い(交付決定日に益金計上)となります。

 
【国際税務教室】 海外赴任とストックオプション(外国税額控除)

  新株予約権(以下、「ストックオプション」とします)は、権利付与から権利行使を通じて取得した株式の譲渡まで長期間を要することから、その間に権利を付与された者が海外赴任を行うケースもみられます。所得税法上、適格とされるストックオプションに対する課税は、居住者、非居住者の区別なく株式の譲渡時まで繰り延べられます。したがって、税制適格となるストックオプションの付与を受けた者に、権利付与から株式の譲渡までの間に、海外赴任等による非居住者の期間が存在したとしても、株式の譲渡時まで課税は繰り延べられます。他方、わが国において税制適格とされるものであっても、赴任先国では税制非適格として権利行使時に課税を受ける場合も想定されます。そのような場合、帰任等によりわが国の居住者となった後の株式譲渡に係る所得税申告に際しては、外国税額控除の適用について注意が必要です。

 所得税法上、非居住者の期間内に生じた所得に対する外国税額は、外国税額控除の対象外とされます(※1)。それにより、税制非適格として権利行使時に赴任先国で課税された外国税額は、非居住者の期間内の所得に対するものとして、外国税額控除の対象外に見えます。しかし、所得税法上、ストックオプションの権利行使時の所得は給与所得に該当し(※2)、当該給与所得の収入すべき時期は権利行使日とされる(※3)ことから、権利行使日が日本帰任後(居住者となった後)の場合には、赴任先国で赴任期間に応じて課税された外国税額であっても、居住者の期間に生じた所得に対する外国税額として、外国税額控除の対象となります。

(※1)所法95条1項、所令222の2条4項1号 (※2)所基通23~35共-6(1) (※3)所基通23~25共-6の2