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税理士法人 成和新着情報

インボイス制度による免税事業者への影響④

  前回まで、請求書等保存方式の場合、A商店(免税事業者)がB商店(課税事業者)へ商品の販売をした場合について「益税」が生じることを確認しました。

 この益税を封じるために2023年10月よりインボイス制度が導入され、これにより事業者が仕入税額控除を受けるためにはインボイスの交付を受けなければなりません。

 事業者がインボイスを発行するには、課税事業者であることが必要で、かつ事前に税務署に届出て登録番号を取得する必要があります。そのため、免税事業者は、あえて課税事業者を選択しない限り、インボイスを発行することができず、入り口で制度から除外されてしまいます。

 これにより、B商店が従来通り仕入税額控除を受けるためには、仕入先をA商店から課税事業者であるC商店に変更することで対応してゆく可能性があります(この場合A商店は取引先を失うことになります)。あるいは、B商店がA商店より経済的優位にある場合には、A商店に消費税相当分の値引きを求め、キャッシュアウトが不利にならないようにする可能性があります(この場合、A商店値引き分の利益を逸失することになります)。

 いずれの場合も、免税事業者であるA商店にとって厳しいものとなります(あえて課税事業者を選択しても然り)。益税を封じることは必要であるが、事業者の経済活動にバイアスをかけるような税制改正について賛否議論がありますので、注視が必要です。

 免税事業者が今後必要な税務戦略については、別の機会にお話ししたいと思います。

 
【農業税務教室】 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮記帳

 固定資産の取得に際して国庫補助金等(以下。「補助金等」とします)の交付を受ける場合には、圧縮記帳の適用により、補助金等の交付を受けた事業年度の課税を繰り延べることができます。

 補助金等は、交付決定日の属する事業年度に益金に計上されます。他方、当該補助金等により取得した減価償却資産は、原則的には法定耐用年数に応じた期間で損金に計上されます。その場合、益金と損金の計上のタイミングに差が生じることから、一時的な課税を受けることになります。そのような状況では、補助金等の交付目的が果せない結果となることから、一定の要件の下、圧縮記帳という特例が設けられています(※1)

 圧縮記帳とは、補助金等の金額を限度として資産の取得のために支出した金額について損金算入を認めるものであり、①固定資産の取得に充てるための補助金等の交付を受け、②その補助金等をもって交付目的に適合した固定資産の取得をした場合において、③その補助金等の返還を要しないことがその事業年度終了の時までに確定した場合に、④帳簿価額を損金経理により減額をする等といった要件の下、適用されます。

 実務的には、③の要件を満たさない場合、すなわち、補助金等の返還を要しないことが、その事業年度の終了の時までに確定しないといったケースにおいて、圧縮記帳の適用に関して戸惑う場合も存在します。

 そのような場合においても、交付を受けた事業年度に補助金等の相当額を「特別勘定」として損金算入を行った上、返還を要しないことが確定した事業年度において、「特別勘定」の益金算入と圧縮記帳を行う事により、課税を繰り延べることができます(※2)

(※1)法人税法42条。なお、個人事業の場合、補助金等を総収入金額に算入した上で、固定資産の取得費を調整するといった計算がなされます(所得税法42条)。(※2)法人税法43条

 
【国際税務教室】 電気通信回線を介した著作物の取引と消費税 

 経済のデジタル化により、インターネット等の電気通信回線を介したデジタルコンテンツの利用も一般的です。これらにおいては、海外の事業者が配信するサービスを利用する場合も少なくありません。そのような場合、消費税の課税関係に注意が必要となります。

 消費税法上、課税対象は「国内において事業者が行った資産の譲渡等」とされることから、国外取引は消費税の課税対象外の取引となります。この場合、当該取引が国内で行われたか否かの判定(以下、「内外判定」とします)は、原則的には、当該取引が資産の譲渡又は貸付の場合には、その資産の所在場所(無形資産の場合は譲渡及び貸付を行う者の住所地)により、役務の提供の場合には、役務の提供が行われた場所によりなされます。しかし、当該取引が電気通信回線を介して行われるソフトウェアの配信などといった「電気通信利用役務の提供」に該当する場合には、上記の原則とは異なり、役務の提供を受ける者の住所等により内外判定がなされます。

 インターネット等を介したデジタルコンテンツサービスにおいては、著作物(※1)を取引することも多いなか、当事者間では、どのような取引を行っているのかについての認識が曖昧であるケースも散見されます。消費税法によれば、電気通信利用役務の提供には、電気通信回線を介して行われる著作物の利用の許諾に係る取引が該当するのに対して、著作物の譲渡・貸付に付随して電気通信回線を介して行われる著作物の受け渡し等は含まれないものと解されます(※2)。電気通信回線を介して著作物の取引を行う場合には、取引内容の整理・把握が必要となります。(※1)著作権法2条1項1号に規定する著作物をいいます。(※2)消費税法2条1項8号の3。

 
インボイス制度による免税事業者への影響③

  前回は、免税事業者が消費税計算をしてしまうと、消費税を納めなくてもよいことによる利益が出てしまうことを確認しました。

 今回は、免税事業者であるA商店から商品を購入したB商店が消費税の課税事業者であった場合に生じる問題点を見ていきたいと思います。

 B商店は、540円あるいは550円で商品を仕入れ、一般消費者に660円で販売する場合に、現行制度(請求書等保存方式)では、A商店が課税事業者であるのか免税事業者であるのかを問わず、その商品が非課税物品であるときを除き、その商品を消費税込みの金額で仕入れたものとし、消費税の計算をすることになります。(前者の場合、60円―49円=11円、後者の場合、60円―50円=10円が、それぞれB商店が納付する消費税となります。)

 しかし本来であれば、A商店は免税事業者であるため、A商店の販売価格(B商店の仕入れ価格)には消費税は含まれていないはずです。なので、B商店の消費税計算において、仕入れに係る消費税は存在せず、上記いずれの場合も、60円-0円=60円がB商店の納めるべき消費税となります。つまり、60円と上記の11円との差額49円、あるいは10円との差額50円をB商店は納めなくてもよいことになっているのです。

 前回のA商店の納めなくてもよいことによる利益、およびB商店の納めなくてもよいことによる利益を「益税」と言います。

 次回は、インボイス制度でこれらがどのように変わるのかをお話しします。

 
 
【国際税務教室】 役員報酬の手取契約(グロスアップ計算)

 国内においては、契約は取引金額の総額によって行うことが一般的といえます。労働契約においても、労使の合意は賃金の総額について行うことが通常です。他方、海外の取引先と契約を行う場合、契約金額は総額ではなく、税引き後の手取金額とする、いわゆる「手取契約」を締結する場面が多く見られます。労働契約においても、使用者から、賃金の総額ではなく所得税や社会保険料等の諸控除を差し引いた後の手取り額についての合意を求められるケースも見られます。手取契約を締結する場合、賃金総額はどのように計算されるのでしょうか。そのような場合には、手取金額から控除されている社会保険料や所得税等を込みとした金額に逆算をすることにより総額を求めるといった、いわゆる「グロスアップ計算」を行うことが必要となります。すなわち、控除する所得税や社会保険等の金額が増減をする場合においても、賃金総額を増減させる計算をすることにより、約束した一定の手取額がもたらされます。

 日本の法人の役員として海外から人材を招聘する際、役員報酬について、いわゆる手取り契約を行うケースも想定できます。その場合、法人税法上の定期同額給与の該当性について迷う場合も見受けられます。法人税法上、損金として認められる役員報酬のなかで、定期同額給与とは、従来は、役員報酬の総額(支給額)が同額である必要がありました。しかし、平成29年税制改正により、手取額(※)が同額となる役員報酬も定期同額給与として取り扱われるようになっています。

(※)支給額から、源泉所得税、特別徴収税される地方税、社会保険料等を控除した残額とされます(法令69条2項)。