平成30年度税制改正において、自社株の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大幅に拡充されました。主要な拡充内容とその注意点については以下の通りとなっております。
1.対象株式:全株式が対象
2.納税猶予割合:贈与・相続ともに100%猶予
3.後継者:最大3名
4.受贈者:先代経営者を含めた複数の株主
5.納税猶予の条件:80%雇用継続要件が実質的に撤廃(理由書の提出が必要)
6.譲渡、解散及び合併による納税猶予額の減免
:一定の経営状況悪化による株価の下落について、下落幅に対する納税は免除
事業を継続することにより、実質的に納税が免除される新事業承継税制ですが、問題点もあります。それは、上記3の場合、複数の後継者へ株式が分散されることにより企業統治が不安定化する恐れがあることです。また、先代経営者一族でない後継者が自社株の贈与を受けた場合には、先代経営者の相続発生時に、当該後継者も相続税申告義務者となることから、一族にとって一族でない後継者へ財産開示をしなければならないということも挙げられます。
そのため、上記5、6によって事業継続リスクについて緩和措置があるものの、拙速な判断により「猶予」である新事業承継税制を利用するのでははなく、他の相続税対策も含めた多角的な対策を俎上に載せて検討することが求められます。